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中国に学ぶ「同一業務同一賃金」とは?

日本でも、最近、同じ業務なのに、正社員とパートタイマーとで給与水準が違う、ということが問題視される記事がでるようになりましたが、組合を中心に正社員側は既得権益を侵されるということで無視と防衛に必死という様相のようです。考えて見れば、これ、同じでないと「公正」ではないわけで、例えば私が赴任していた中国ではこれは法律に明記されている事項ですし、制度上これが担保されていないと、たくさんの従業員が「総経理、私は意見があります!」と押し寄せてきてしまいます。

もともとはこの言葉は男女間の賃金格差を是正することを原点にスタートしていて、性別や年齢、人種での差別については日本を除けば先進国では是正されてきているのが実情ですが、雇用形態については、各国で対応が分かれており、ヨーロッパと中国が差別的取り扱いの是正については最も進んでいるようで、アメリカと日本は遅れています。

 

実は、中国は労働法制を含む社会法制は非常に進んでいます。ただ、それが末端まで浸透しているか、というとそこには課題はおおいにあります。また、若い層を中心に労働に対しては、いわゆる職務定義とポジションに対しての報酬水準という「職務給」の考え方が一般的であり、この点では(実はそれ以外の資本主義的な仕組みでも)アメリカに近しい仕組みや考え方となっています。顔は似ていても考え方はすごく欧米的、というのが日本企業が中国で違和感を感じる背景の一つなのです。

 

話は戻って同一業務同一賃金を守るため、どのような仕組みを構築しているかというと…(これは工場的な仕組みの会社の場合です。)

・一律の基本給:基本給は工程管理者、検査員、制作員任されている職位により相違がある→ただし、年齢や性別、雇用形態はここに考慮にいれない。

・1個当たりいくらの成果給(個数に対して品質水準で割り増し、割引)→これは全社員一律であり、生産性向上とともに給与が比例的に増える仕組みとする。

・遅刻は基本給から時間分差し引き(これがないと平気で遅れてくる)

という仕組みが基本的なところです。また、管理部門と各セクションリーダーは、目標管理制度を導入して達成度に対して報酬がアップダウンする仕組みを導入していました。この仕組みですが、実は残酷な面もあります。慣れてくると10代女性が圧倒的に早く、20代後半~30代になると速度もおち、実は品質も落ちるケースが多いのです。特に新しい仕様要件が加わり研修を開いたあとにそれを適用したりすると(その箇所を重点検査するわけですが)、ベテラン勢の対応力の低さは顕著です。歳月は残酷です。(という私は、近くが見えにくく眼鏡をはずしてこの記事を作成しています。)

それまでに指導的立場に昇格できればそれでよいのですが、実はそこにも問題があります。本稿、中国は進んだ考え方を取り入れていて素晴らしい、というブログではないのです。彼らの中には、大卒はリーダーであり手足を動かさず口を動かす人、中卒、高卒を使う人、という固定概念が特に大卒層に強くあるのです。「既得権益」を政治、中傷、買収などあらゆる手段を用いて守ろうとするのは日本でも中国でも同じです。

現場の監督や指導員は現場実務とその人達の気持ちがわかっている人で構わないので、私がその区分を撤廃しようとすると大反発が起き、かなりの数が辞めてしまいました。でも、それでよかったんです。大卒層はむやみに給与が高かったので、本当に必要なビジネスモデル思考ができる人以外は減らして管理者割合を下げないと、中国の社会的な労務コスト上昇を吸収できなかったからです。

日本でも「多様な働き方」を取り入れ、パートタイムでも優秀な人のスキルを活用していくことが必要な時代になってきました。そんなとき、彼らをうちに取り込めるのは、正社員の既得権益に切り込める組織であり、自らを変えられる組織だと最近よく思います。私は、4時間、5時間の労働形態をいれつつ、時間給は正社員と同じにしてたくさんの応募者(その大半が優秀な若い女性)の中から面接で厳選する、ということをよくお勧めしていますよ。

 

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