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失敗の橋~はじめに

 ビジネス界で長年の命題であることの一つに、「事業の成功は努力と才能によってのみ成し遂げられるのか?それとも運なのか?」というものがあります。あなたはどう思いますか?過去、たくさんの中小企業経営者にお会いしてお話を聞いてきて、思うことがあります。

成功者のパターン?

 きちんと会社を維持し、多少なりとも成長させることができている創業社長は、概して頭がいいです。話して最初の1,2分でそれを感じます。どの辺にそれを特に感じるかというと、市場の捉え方や自社の課題や戦略について、適度な抽象化を行い、わかりやすい説明をする、と言うあたりです。ただ、頭が良くても、自分と同じことが人もできると思う、というような組織の組立方をする人は10人の壁を越えられません。

 そして、土日も夜も仕事をしていて、必ず期日にそこそこの出来栄えのアウトプットができます。Slackでつながっていると相手がオンラインの時が見えるのですが、起きているときはだいたい、すくなくともSlackが起動している様子です。そして、日中、矢継ぎ早の判断に追われてそんなに落ち着いて時間が取れているとは思えない人が多いので、そういう時間帯に時間を作っているのです。
 お盆休み中に私も40代の経営者の方と半日ゆっくり話すという機会を持ったのですが、「会社涼しいし静かだから来てやってるんだよ!」と明るく言っていました。本人はそれを当然だと思っているが、一般の社員からしたら大変なことです。ただ、これは、「自分が前に進まないと、改善しないと、自分個人が破産するリスクと隣り合わせ」というプレッシャーが推進力となっていることも事実です。

 しかし、それにもかかわらず運の要素は多分に見え隠れします。もちろん、そこそこの会社の経営者の子供として生まれ、事業承継者に選ばれた、というような要素は他の人からもはっきりと見えていますが、そうでなくても、創業にあたって、かなりの成功者であった親からの資金援助(借入)があったというケースもあります。そうでなくても、親が「まじめ一筋のサラリーマン」であったか、それとも日々資金繰りや人材配置に頭を悩ます商店主だったかによっても子供のマインドは大きく相違します。 また、成長のきっかけになった大きな受注というのがだいたいの企業にはあるわけですが、その受注は、完成した製品・サービスを万を持して提案に行って勝ち取ったか?というと、大抵のケースでは決してそんなことはなく、たまたま紹介、たまたま一本の平社員の掛けてきた電話を取ったことというような「幸運」によって得られ、できもしないことをできると言い切って、エース社員がそこから突貫工事で何とか対応したという秘話は決して少なくありません。


 外から会社を見ていると、会社は一つの塊に見えます。しかし、事業は、社員や取引先の行動、判断、製品の品質や競合の動向などの無数の要素が組み合わさって成り立っています。その無数の要素のうち、たまたま知っていた。たまたまいい人が応募してくれた…ほんのいくつかで偶然が重なりあっていて、その中で、ある程度の積極性、あるいはリスクテイクと言い換えてもよいのかもしれませんが、突っ込んだ姿勢を取ってその偶然を手で掬い取ったら、実はそれは金の卵だった。大慌てで、体裁を整えて必死で生産して納品したら、好評をいただいた。
 こんな感じで、運を才能と努力でつかみ取った、それが成功者の平均的実像です。

「非」成功者は成功者と違うのか?

 ただし、これはよくある生存者バイアスというものです。実際には、「うまくいかなかった人」もたくさんいます。(そして、それらの何倍もの数の「挑戦をためらった人」がいます。)その、「うまくいかなかった」「途中でうまくいかなくなった」人たちも多くみてきました。私自身がそのカテゴリになったこともあります。


 その人たちを見ると、たしかに、「ここが上手くなかったな」というポイントがあるにはあります。ただ、それが生存者と比べて著しく劣っているのか?というと、生存者たちもまた、決して完璧な人間などではななどではなく、たくさんの失敗をしています。もちろん失敗の中には、最初から全然だめなケースもあるのですが、実はそんなに大きな能力差、努力差がないケースも多くあります。ただし、危機に陥ったときに、周りの迷惑を顧みず怪力で事態をねじ伏せるような動物的な生存本能の強さのようなものをもっていて、会社を生きながらえさせる、というタイプの経営者が一部にいまして、これは別枠ですごいな、と感じています。
 そのため、失敗の引き金を引いた出来事を知り、そこから学ぶことはできます。しかし、それが失敗の「原因」そのものではないのです。

 大きな成功を収めた経営者は、よく「自分は幸運だった」といい、その得た財産の一部を寄付等で社会還元します。しかし、本当に運だけだったわけではありません。

成功と失敗を分けるものは一体何なのだろう?

 弊社は、創業3年を経過し、実はこの投稿で494稿目、まもなく500回を迎えます。その間、決して国際展開する上場企業を一足飛びに作ろう、というようなことをするつもりはなく、ただただ、「潰れない会社を作る」ということを中心にお客様にお話をしてきましたし、このブログの中心テーマも、第1回の記事から一貫して「どうしたら潰れないのか?」だったつもりです。

1回目はこちら

 

普段は、その中でオペレーションの改善や人事評価システム、あるいは競合市場の分析、というような「各論」をたくさん積み重ねる活動を提供しているのですが、この機会に、この3年、あるいは、企業の管理職として25年やってきた経験から、その中でやっぱり、「こういう人が潰さない、上手くいきやすい」というものはある、と感じています。僭越とは思いつつも、成功者と失敗者を分けるものが、本当は何だったのか?わたってはいけない失敗の橋とは?を何回かに分けて整理したいと思っています。もちろん、それは自戒の念も含めてでもあります。

 今の予定では、こんな内容の予定です。

  • 執着心、あきらめない、いつまでも言い続ける
  • やる必要のないことはやらない、止めさせる
  • 「人とはこんなもの」という暖かい目線
  • 曇りなき眼 思い込みを捨てる
  • 変え続ける、次の「あるべき姿」を描く。
  • 正しい交流、正しい迷惑

ご関心がありましたら、次回以降もお付き合いいただければ幸いです。

 

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