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名刺から小さな会社の顧客DB構築②

この第2回の記事を本来、金曜日に公開すると①で予告していたのですが、私には珍しく延期して別記事に差し替えてしまいました。①はこちら

遅れたわけ(前回記事の補足)

実は、この記事に同時並行して、いや正確にいうと、実際に取り組んでいるお客様業務があって、それをヒントに考え方を整理する、ということをしていたのですが(このパターンの記事はよくあります。このブログは「実際に見た風景」を書くことにしていますので)、そこで大きく作業が遅延してしまったのです。それは、前回の「名刺をデータ化」するところで生じました。

お客様の中心メンバー(前回記事でいうところの「部長」に相当する方でこの方の名刺を母体にすればかなりがカバーできるという判断をお客様としていました。)の名刺を①に書いたように、名刺管理ソフトからCSVで吐き出してそのリストに対して対象者をマークしてほしい、ということをお願いしたのですが、お客様の社内ではルール化がなく、個人でCSVで吐き出せないタイプの管理ソフトを使用されていました。また、その方の何千とある名刺の中で、対象は百数十だろう、ということが想定されたので、その方が改めて紙の名刺をピックアップしてくれたのです。ここまでは前回記事の通りの進行でした。そこで、紙で送ってもらってもよかったのですが、この方ITにも強いので、富士通製スキャナーと付属するアプリでこの名刺をOCR化してくれたのです。ところがこのデータがかなり酷い状況でした…最近は名刺アプリのOCR機能の辞書の優秀さに慣れていたので、久しぶりにシステムの馬鹿さに一人悪態をつきながら1日かけてその百数十をタイプしなおしました。ホントに変換ミスの傑作集のようで、個人情報でなければスクリーンショットをここに掲載したいぐらいでした。

名刺は社名や法人名、住所、郵便番号、電話番号、メールアドレスなどが一定のルールで出現しますので、これらに出現する辞書を用いて強力に補正することができます。たとえば、束京都と読み取ったとしても、それのあとに港区ときていれば、これは東京都だな?と推測できるわけですがこれをシステムが行ってくれています。あるいは、「コーポレーション」は頻出しますが、「コーボレーション」はまず出てきません。「.jp」は頻出しますが、「.ip」「.io」はめったに出ません。(今回、一社だけ.ioがあったのですが)数字の前に「町」は頻出しますが、「叮」はめったに(数字の前でなくても)見ません。これらの例は今回出現した認識誤りの一部です。これらを利用して(もっといろいろな形式、単語などをヒントにするのですが)、名刺管理の専門ソフトは汎用OCRソフトに比べて高い認識率を保っているのです。

ちなみに私は、10年前に電話帳データをOCRで高速高精度で読む開発の研究をしておりまして、この辞書と推論アルゴリズムを作っていたことがあります。それとほぼ同様です。(電話帳にはさらにもう一つ前回データと95%程度が同一のレコードが出現する、という大きな特徴があります。)

ところがいただいたデータは、名前のところに、別の箇所に印字された「東京2020オフィシャルスポンサー」と入っていたり、上のような誤認識があったり、080で始まっているのに、携帯電話ではなく、FAX欄に入っていたりという誤りが多数ありました。

画像データをもらって、再度名刺アプリで撮影することも試みたのですが、名刺アプリは、カメラに写る名刺の「枠線」を利用して判断している(そのため、前回記載したように、名刺の中に四角枠が存在するとそこを誤認識する)ため、一旦スキャンしてしまうと、「名刺がそこにあること」を認識してくれませんでした。

というわけで全部打ち直しました。いえ、「百や二百は打ちますよ」とお客様に言っていたし、その覚悟はしていたので別にこれは業務上は構わないのです。最後は、御託並べていないで深夜までのパワー作業で問題をねじ伏せて状況を変える、という気合をもって仕事をしているつもりですし、そこの負担をお客様にやらせて現状が改善するとも思っていません。

ただ、有名メーカーのスキャナー付属の名刺読み取りソフトは、無料の名刺管理アプリにはるかに劣る、ということです。ちなみに主要な名刺管理アプリでもスキャナーの連続読み取り機能に対応していますので、読み取りさえキチンとアプリの仕様に基づき実施できれば改善は可能です。スキャナーの問題ではありません。

顧客との継続的なコミュニケーションを本当に重視しているか?

さて鬱憤を晴らしたところで、今日の本題です。「顧客との継続的なコミュニケーションが大事」ということは経営者は皆言いますが、本当にそれを現場の日常に落とし込めていますか?具体的には、KPIを決め数字を追跡し、人事評価の一部に取り込んでいますか?

大きな会社で専門部署があるような場合は別として、そうではない会社ではほとんどのケースでやっていないか、やっていても形骸化してしまっているのではないでしょうか?本当に、BtoBでも、BtoCでも本当に「一生のお客様」と思っていたら起きないはずの不正や強引な販売があちこちで問題になっています。かんぽ生命の営業でも今問題になっています。こうしたことを「現場の暴走」と片付ける風潮がありますがそれは経営的に正しくありません。明らかに、経営者の失敗です。私が好む言い方をすると、「サービスのサブスクリプション化の本質を見極められない、オールドエコノミーしか知らない経営者の不作為による失敗」です。

具体的には、需要が拡大していた時代には当たりまえであった「1回買ってもらえばそれで終わり」というビジネスの仕方では、十分な利益、あるいは事業の成長を得られない時代になっています。顧客数が伸び、次々に買い替えるという時代ではなく、グローバルな競争の中で価格は常に下落圧力を受ける時代になり、できるだけ長く使う時代になっています。

その中では、「十分に有効活用して使ってもらい、使ってもらうことで継続的に課金させてもらう」「使いこなし、成果があがる。やりたいことが増加すると追加で課金させてもらう仕組みにする」という仕組みのビジネス体系が有力な選択肢である、というのが今の常識となっています。これが「サブスクリプションビジネス」の本質です。そのためには、同じユーザーが同じ業務内で使用する周辺領域一帯に徐々にスケールを拡大できる、他社に十分比肩しうる商品群を用意して複数メニュー化します。そのうち、一部はOEM的なものでもよいでしょう。

しかし、商品を用意し、契約を強力に後押しすればよいかというと、そうではありません。この仕組みに一旦移行してしまうと、ビジネスの様相は全く変わってしまいます。つまり、「使ってもらって成果が上がって満足してもらう」状態を実現しないと、解約されて売り上げが下がってしまうのです。ですので、直接のKPIは、「新規獲得数」のほかに、「解約率」が重要ですし、その解約率を決定づける「サービスが有効に活用でき満足してもらっているか」「サービスの未使用部分や将来機能に期待してもらっているか?」ということを具体的に把握し対策していくことが必要になるのです。

このように「サブスクリプション全盛」の時代において、CRM(顧客との関係性のマネジメント)は、「道徳、きれいごと、間接業務」だった昔とは違い、「売上維持、向上のための主要なKPIの実現要素」に様変わりしていて、「経営者に数字で報告されるべき重要指標」なのです。このマネジメントのない販売は、現代において「底の抜けたバケツ」です。いくら水を汲んでも、汲んだそばから水は漏れていってしまいます。

そして、携帯電話のビジネスのように、いくら解約違約金のような形でスイッチングコストを高くしても、競合サービスが現れると、その解約違約金は意味を成しません。競合サービスがその解約違約金を負担できてしまうからです。なぜ、競合がそのような行動をとるのか?というと、この方式を活用すると、「ストックがたまる」からです。これについては詳細に説明する機会を近々設けようと思っているのですが、簡単にご説明すると月額の利用料金は比較的廉価に抑えられていますので、最初は獲得のためのコストが収益を上回ります。しかし、利用者が満足されていて解約率が十分低い場合には売上総額は新規獲得者の上積みに伴い加速度的に向上し、顧客維持のためのコストは比較的低廉なため、膨大な利益を生み出すことができます。また、新規獲得に頼ることなく、「年間の売上の大半が年度始めににわかっている」状況を構築することができるため安定した業績を実現することができます。

この考え方は、携帯電話やビジネスアプリケーションのような本当に毎月課金するようなものだけではなく、たとえば日用品の通販サイトのように低価格高頻度の購買の場合にも良く当てはまります。そして、このようなストックエコノミーを実現すべく、「ものではなく、サービスを売るのだ」という考え方が、自動車、住宅など高額なサービスでも表れてくるようになったのです。私は、この流れは不可逆的であり、すべての財は、月額課金化する流れにあると思っています。そして、そこでは繰り返しになりますが、CRMは継続率(解約率)、追加購買率を決定する重要要素であり、そこには数値的管理と成果評価が必要なのです。そこを経営者が理解し制度化し徹底しない以上、なにをやっても砂上の楼閣であり、経営者は「現場の暴走」を言い続けるでしょう。

ここら辺の長期戦略、商品設計、KPIの組み立てと追いかけさせ方、評価への組み込みなどは弊社が最も得意としていることですので、個別にご相談ください。(これ営業です)

CRMで何をやる

というわけで、CRMで何をやり、何を実現しなければならないか?はすでに上に書いてしまいました。整理すると、目的は、有料で使い続けてもらい、利用しなくなる、他社にスイッチしてしまう、事を防止することです。では、「利用しなくなる、他社にスイッチしてしまう」ことはなぜ起きるのか?ということを構造的にとらえて、それに対することをやっていけばいいわけです。個別の商品ごとに具体的には異なるのでしょうが、簡単に例示すると、「利用しなくなる」については

  1. 需要が減退した、あるいは最初から少なかった。
  2. 利用方法が十分理解できておらず、本来の効果が発揮できていない
  3. 利用方法はわかっているが、効果のある対象がわかっていないため、本来の効果が発揮できていない

などが考えられます。つまり、操作方法や適用対象を含めてビジネスでの活用の仕方を提案したりヘルプしたり、ということが2,3の対策になるわけです。1は、低利用料の場合の価格体系を新設するなどの対策は考えられますが、サブスクリプションエコノミーではある意味あきらめざるをえません。

次の「他社にスイッチしてしまう」については、

  • (競合に比べて)十分魅力的だというインプレッションを持っていない
  • 商品の将来の発展への開発体制や現在のシェアに対して疑心暗鬼を払拭していない

というような要素が考えられます。有力なユーザーが採用していることや具体的事例、あるいは今後の機能開発が十分力を入れて行われていることなどを示し、顧客にとって、その分野で常にNo1の存在で居続けることが必要です。その中では、プレゼントや他者の紹介によるインセンティブといったプロモーションでファン化するようなことも候補になります。

そうして、「提供情報の送達開封率」「リアクション率」「サービスの利用率」「解約率」などを追跡調査していくのです。

CRMはどうやってやる。

では、こうしたことをどうやってやればよいのか?というと、最近ではみんなSNSと思っているところがあるのですが、これはケースによりまちまちです。ただ、SNSが一番の選択肢になる、というケースはあまりないと私は考えています。前にも「広告プロモーション」の時にも同じようなことを書きましたが、SNSは発信者にとって楽で「やった気になれる」仕組みですが、受信者がきちんと読み、期待したインプレッションを与えることができるか?という意味では実はそれほど優れた方法だとは思いません。

そもそもCRMと横文字を使うと何かシステムでやらなければならないような思い込みにとらわれるかもしれませんが、実際には、「社長や営業が顧客に話に行く」から、「DMと返信用はがき」、「電話」、「電子メール」まで様々な方法があります。そもそも、営業が日常の中で上のやるべきことを販売済み顧客にキチンとやれていれば、こんなことはいらないはずのことではあるのですが、そこは万能を要求しても無理なわけです。

現在比較的よく用いられる送達する方法としては、

  • SNS(Facebook,LINE)のグループ機能
  • 電子メール
  • 紙ベースでの送達

があります。SNSは「きちんと読ませる」ためには、リンクからwebサイトに飛んでもらう必要があり、単体ではレイアウト機能も限られています。実はこのwebサイトへのコンバージョン率(リンクをクリックして読んでくれる率)は非常に低いという欠点があります。この記事を読んでいただいている方の多くは弊社、または代表のSNSのリンクをクリックしてくださっているのだと思いますが、実はそのリンクのクリック率は表示された方に対して10~20%しかありません。SNSで「いいね」をクリックしてくれていても、本文を読んでくださっていない方も結構いらっしゃいます。その意味では、お届けしたもの単体でお伝えしたいことが完結している、ということは大事なことです。また、SNSのアカウントを持っていても実質的に閲覧していない層も多いのです。実際に高頻度で閲覧している人はアカウントを持っている人の一部だけです。そして、高頻度で閲覧している人の多くは、「自分の言いたいことは言うが人の言っていることには関心がない」人です。

その点、電子メールは相手に直接届き、しかもタイトルぐらいは見てくれる可能性が高いです。一定のまとまった内容を完結した形で伝えることができ、電子メールを運用する場合、1通あたりの送達コストはたとえばある有料のサービスでは2.8円程度です。一方郵便等ではDMサービスを利用しても50円を切ることは難しい。これに印刷費用や封入作業、資材にかかる費用も生じます。また、メールは本人のパソコン上に送達されるが、郵便は法人の場合本人に届かない、届いても開封されないケースも多いです。この中間のFAXという方法もありますがコストは下げられますが、郵便以上に本人の手元に届きにくいです。郵便やFAXでDMを送られたあと、電話でフォローの営業を受けることがありますが、そのDMやFAXを見た記憶があることが、私はほとんどありません。その点、メールは「迷惑メールフォルダ」に入っていない限りはだいたい覚えていますし、自分の関心がある、身に着けたい分野のノウハウの書いたものだと取っておいて、電車の中で読んでいたりします。

 メールでのマーケティングには記載方法の工夫など途中離脱を防止する各種工夫が必要ですが、それでもなお、有効な送達率はむしろ郵便よりも高いと考えられます。また、速達性においても、コストにおいても電子メールが優れていること、相手のレベルや業種によりコンテンツを変更しながら送信することも可能であることから、顧客のサービスの利用可能性や理解度を改善するための情報提供を目的として継続的に実施する多くのケースで、メールでの情報提供が2019年現在でも第一案であると考えています。

メールでどのように行うのか?

では、メールでCRMを行うには具体的にどうしたらよいのでしょう?こうしたことを手伝ってくれる専門のサービス会社というのもたくさんあります。ただし、彼らが本当に貴社にとって効果があることを提案してくれるか?ということは少し疑ってかかった方がよいでしょう。私が見てきた中では、「より金額がかさみ(たとえば、web広告類)、短期でより表面的な効果が見えやすいもの(例えば、webサイトのPV数、訪問者数)」を提案したがる傾向があるように思います。また、本来はこれは、「システム」の話ではなく、貴社のマーケティングと商品設計そのものの話を十分理解していないとできないもののはずです。しかし、私が今までお会いしてきた専門業者の多くは大手有名企業を含み、そこへの理解度は非常に低い人が担当者でした。

そして、その割には、月額30万、50万というような作業費用(広告掲載費やシステム費用はさらに別にかかります)が取られます。確かに専門業者に依頼すると
私のようなセンスがないのがやるよりも要領を得たキレイなメールコンテンツが出来ます。しかし、必要なのは、その美観ではないはずです。

そして、その1人月分の費用が容易に出せない、というのが本音の中小企業は多いはずです。そういう会社がどうすればよいか?それを提供することが弊社の使命です。それは…長くなったので次回に分けて記載することにします。

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