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お客様が複合機を相談してきて、結局プリンターを購入した

2か月ほど前の、とあるお付き合い先のベンチャー企業でのお話。営業体制を見直すとともに、みんなの努力の甲斐あり、大型案件がいくつか受注でき、慣れないみんなは会合前、商談前に大慌てで資料を印刷し、間に合わないの、インクがないのと大騒ぎ。

これまで同社ではSOHOで良く用いられるブラザー製のA4のインクジェット複合機を15人ほどで共用していました。このこと自体は、良い選択だったと思います。同社のインクジェット複合機は価格も安く、速度や様々な性能も充実しています。私も、「起業したらコピー機入れる」というような固定観念の中年以降起業家には、それを諫めて小型のインクジェット複合機でスタートすることをお薦めしています。しかし、事業に戦略的、組織的に取り組み始めた同社では、どうやら次のステップに進むときが近づいてきたようです。

 

こういう時、「変える」力になるのは、(私の決まり文句ですが)その組織に「長くいる」「役職者」ではなく決まって「ワカモノ、ヨソモノ、バカモノ」です。この時、私に相談してきたのは、入社まだ半年に満たないが実力ある、現場で営業や企画に携わる若い女性社員。「〇〇さんって、コピー機とか売ってたって聞いたんですけど、相談なんですけど~」

売ってましたよ。かつての同僚に頼めば多少は安くできますし、期末が近づいていたので、決算対策を読みに入れて交渉もできますし、大手商社の本体の仕入原価の正味の水準も、カウンター料の利益水準も知っています。お客さんに割高にならないようにして、裏で紹介料を業者からもらうこともできるでしょう。でも、そうはしませんでした。理由は、この会社に本体代の減価償却、あるいはリース代という形の固定費を生むのは時期尚早と考えたことと、運用面でも、彼ら自身が自分で「なんとかやりくり」することができるぐらいの知的バイタリティがあるので、多少複雑なオペレーションや自力での対応もできると思ったからです。

 

最初に相談を受けたときには、5万円以下でA4レーザーで両面ユニット付きのものにしようと検討を開始したのですが、最近になって社長の承認をもらったという連絡が彼女からあり、再調査したところ、ちょうどおりしも大手メーカーのキャノン、エプソンからA3カラーレーザープリンターが3月末までの期間限定(これも顧客、そして自社の決算対策でしょうね)で5万円以下で買えるという状況が生まれていました。そこで、これを導入し、コピーとFAX、スキャナーは従来のインクジェット複合機に業務を残すことにしました。実際、多くの会社がそうであるようにこの会社でも複合機の稼働量の9割以上はパソコンからのプリントアウトであるからです。

そのうえで、「トナーのせいでプリンタが壊れたら全額保証する」という保証のついた再生トナーでこのプリンタを運用することとし、これの取り扱い商社(以前から協力関係のあるところ)に見積もりを依頼し、正規品の運用コストの1/5程度になることを確認しました。また、このプリンターの故障等の運用停止時は従来のインクジェット複合機を残すことで業務を退避させることとし、予備機運用は行わないこととしました。月1万枚使用時の24か月の本体代∔トナー代はすべてカラーとして約30万円と試算しました。つまり、再生トナーを使用したとしても、それでもなお、本体代の5万円に比べて、トナー等ランニングコストの方が数倍の規模があるのです。ましてや純正品を利用した場合は、この額は100万円規模に跳ね上がります。(これには紙代は含んでいません。)オフィスのプリンターの運用コストというのは、最近のカラードキュメント化に伴いずいぶんと高騰しているのです。

ちなみに同じ分量を立派な複合機を導入した場合には、さらにこの金額は250万円規模に跳ね上がります。(カラーを月1万枚というのがかなり多いのでこうなるのです。)30万円と先ほどの100万円、この250万円の差が、安心量であり、「なにかあったら来てもらえる」コストなのです。でも、最近の複合機のサービスマンは昔と違ってその場で直せないことが多くなっています。結果交換基板やパーツを再度取り寄せて終日、あるいは翌日まで停止しているということも多い。単純な物理故障で部品交換というケースが減っているのが主な原因です。

私はこの試算を示し、「本体を5000円安く買うことではなく、トナー代を適正化することが皆が意識すべきこと」であることを示しました。その上で、導入を決定したあと、次のような支援を行いました。これも大手メーカーの複合機を導入すれば自社では何も考えないでも、売り手がおぜん立てしてくれる作業です。

①接続用の無線WiFiルーターのポートの確認と設置場所を決めて、LANケーブルの手配依頼。

②再生トナーの発注フォームを作成し担当者に引継ぎ、末締末払での対応を協力商社様に依頼。

③社員向けの運用上の注意の呼びかけの作成

 

③では、モノクロ印刷を推奨しドライバーからの指定を行うこと、両面、さらにはA3印刷を生かした「袋とじ印刷」の活用により見栄えと紙代のコストダウンや資源節減の両立、本当の大敵が「ミスプリ」であることを意識するよう呼びかけを行いました。これらをハードウエア、あるいはソフトのデフォルト設定を指定しあるいは強制し統制することも可能なのですが、まずはソフトな「知識の提供と注意喚起」で様子を見るのが、この会社の自分で考えることのできる若い賢い皆さんには適当だろう、と判断しているからです。

 

この先、プリンターのスタック時のトラブル対応をどうするか、など単純に複合機を導入しておけば発生しなかったであろう問題はまだまだたくさんあり継続的に面倒をみることになるでしょう。しかし、この施策によりおそらくこの会社は複合機導入に比べて2年で100万円以上の費用節減ができたはずです。そして、彼らはこうしたものをどのように社内で正しく検討していけばよいのか?の事例を得ることもできました。

そして私は、コピー機業者からのバックマージン何万円かをもらい損ねた代わり、ブログネタを一つと、若いベンチャーの志士たちに少しだけ役に立てた、と自己満足を得ました。

 

期末になり特価品が出たり、業者の方も「最後のお願い」に余念がない時期ですが、「本当に考えるべきことは何なのか?」の参考にしていただきたい事例です。

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