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こんな会社もありました その1 「神様に聞きます」

嘘のようなホントの話を時々書くので、「あいつは話を盛っているのではないか?」と実際に面会したときに思われていることを感じることもあるのですが、「事実をぼかす」ことは関係者の名誉や秘密の都合上あっても、盛ることはありません。毎回長文を書いても、読んでいただけないケースも多いので、過去に出会った、いろんな意味で個性的な会社を簡単にご紹介するシリーズを時々書いていきたいと思います。今日もそんな話題から軽~く一つご紹介です。

 

東京都内のとある機械メーカー様、従業員は100名弱ですが、製造業向けBtoBの堅実な事業を展開されていて業績の方も堅調です。最近では新工場棟を完成させられました。ただ、不思議なことに建物の壁がすべてライトグリーンなのが、担当することになった部下が伺う前の事前準備(工場の外観やサイズ、設備や稼働内容をそれで事前に推測していた)でGoogleストリートビューでわかっていました。こういうパターンは過去の事例でも、経営者に何等かの縁起担ぎ的なものがあることが多いです。

 

私直接ではなく、当時の部下が幹部の方にご面会して商談させていただきました。そして、帰ってきて私にこう報告するのです。

「内容はOKいただいたのですが、最終、神様のお言葉を聞いて決められると言っていました。」

「んっ?」

 

話を整理すると、その会社の代表のお母さまがそこそこの規模の新興宗教の教祖様であり、会社の重要な事項の導入可否や導入時期はすべて神様のお言葉を教祖様を通じて伺って決めるそうです。ちなみにこれは、2018年の話です。1818年や1918年ではありません。壁の色もそうして決められたし、新工場棟の着工時期もお言葉により数年待っていたそうです。もちろん、同社のWEBサイトにはそんなことは書いてありませんで、ごく普通に商品の特徴やサポート体制がきちんと説明されているだけですし、担当の方も真面目そうな普通の会社員だったそうです。

 

製品は、あまりメディアに出るようなものではない業務用のものですが、大手メーカーにも導入されているしっかりとした導入実績がある確かなものであり、現に新しい工場棟が立つほど業績はいいのです。

「取り組みの論理性とPDCAのサイクルのアジリティが経営改善の近道」という私の理念は・・・神の前に敗れ去りました。そして、営業に行った当の結果は・・・担当→代表→教祖様→神様のルートで事案を上げて、その逆のルートでお告げをなかなか聞くに至りませんまま時間が過ぎ去りました。経営者以上に神様はお忙しいらしい、のではなくそこは普通の組織同様、決済権者に直接会うのでないと、どこで何がだめだったかをトレースすることもなかなかできない、という営業手法の問題であり、神様や教祖様には会えなくても、代表にはお会いするような組み立てが本来は必要でした。

現場の利用する日常設備の更新などは現場の責任者のご判断で導入の動向が判断できますが、そうではない大型の商品や経営関連サービスの場合、担当者に提案してもなかなかうまくいかず稟議を待ってきても時間が過ぎるばかり。こういうものは、代表クラスになんとかアポを入れるつてをあらゆる方法で探してからその相手に行く、という安易に走らない「我慢」が本来必要なのですが、この案件はちょっとそれがうまくいきませんでした。もし、この会社にその手法をきちんと適用していたら、事前に判断が「非常に変わった方法である」とわかって、営業対象とすることを断念したかもしれません。

 

理屈なんてどうでもよくて、結果を出して株主と社員とお取引先が喜んでくれれば経営者はそれでよいわけです。

この会社の経営者の方は素晴らしい、ということに異論は全くありません。

でも、なーんか釈然としないんですよね。

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