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思い込みをどう解除するのか?

弊社のお付き合い先に創業150年近い染物工場があります。建物も工程もまさに文化財の域です。何度か見学させてもらい、その織物、そして染色をもっと今よりも高い単価で、広い用途で、世界で販売することはできないか?といろいろなことを考えてきました。

たとえば、その生地を建材として板に貼って商品化する、ガラスに挟む、紙箱に貼る…自分ではいろいろな可能性を探り、あちこちに情報網を張ったつもりでいました。

 

先週のこと、これはまた別の創業100年を超えるインテリアメーカーさんの創業家の方と、その会社のショールームでじっくりお話しする機会をいただきました。どちらの会社も私がお話ししているのは四代目で他社での業務経験もあり、40代の若いリーダーが会社を率いています。私の関心はむしろ、その歴史ある組織をいかに現代にフィットさせていく工夫をされているのか?を勉強させてもらうことにあったのですが、そのショールームの中にある青い木製品が、お部屋に入ったときから気になっていました。最近、紺色のものを見ると、「あそこにあのお客さんの染物使えないかな?」と気になって仕方がなくて、別の機会でも額装の作品の周辺部分に使えないかと展覧会で聞いていたり、と地道な活動をしていたのです。

すると、私の様子に気づいた経営者の方が、おもむろにいうのです。「あの青いのは、木を染めたんです。」

 

その時、かなりの衝撃がありました。その青い木製品が光っているように見えました、ホント。

私は、工場をよく知っているばかりに工場に立ち並ぶ機械を稼働させ、社員の活躍の場を増やすという目標にいつのまにか囚われてしまっていて「工場の機械で染めた布をどう使うか」を起点に考えていました。しかし、ユーザーからしたら、布を張って表面のテクスチャーが面白い製品であるならば布を使うし、そうでなければ木に色がついていたり、紙に色がついているものでもよいし、それぞれ特徴がある中で選べばいいわけです。実は小ロットであれば、木でも紙でも工夫すれば染めることはできるわけで、木や紙と布を組み合わせる製品づくりもできる。それを最初から考慮から外していたのは、戦略の立案という点では稚拙であった、と思ったのです。

 

こういう落とし穴は日常たくさんあって私自身も、そういう視野狭窄をたぶん自分でも気づかないうちにたくさん行っているのだと思います。それを今回気づくことができたのは、同じ100年企業の若手経営者でありながら、製品は少し異なるという「風」に当たったからでしょう。幸いにして、風を感じないほどにはまだ鈍していなかったのですが、それでは私は、日頃、どうすればその風にあたることができるでしょう。

 

私はよく、中小企業の経営者に組織の戦略について、「小さいのだからやることには一貫性をもってやらないと大きい相手には勝てない」というようなことを言います。そして、いろいろな施策の間で一貫性を組織が持つ、ということがいつの間にか、ただの「無思考な同調」に陥りがちであることを感じます。そこは言葉で話せば別の概念であることは明らかですが、実際の組織の中では口が達者で実績と信念のあるリーダーに、「賛同して協力」していることがいつの間にか、指示を受けて、あるいはそれすらなしに惰性で作業をしていることに代わっていることをよく見かけます。

 

その点、営業という職種はお客様のところに伺い、その会社の商品やオフィスを見て文化に触れる機会があるだけに有利です。伺う会社会社でそれぞれ挨拶の仕方や整理整頓、活気、机の並べ方などが異なり、それには必ず根拠、背景があります。優れた営業マンは会社のスポークスマンであると同時に、会社に風と光を取り込む窓でもあり、彼らにその役割を期待していることを事あるごとに声にすることで補うことはできるでしょう。

また、本当は、同じ戦略目標に対して、違うアプローチがあることを思いつくのは、違う生育環境や生活環境、違う文化感からの視点がある(ただし、対象マーケットへの理解は同レベルで保有している)と有利でしょう。つまり、マーケットへの理解力や言葉や表へのアウトプット力がある、という前提で多様なダイバーシティということは、このようなケースで有利である、ということです。ただ、ダイバーシティというのが目的になってしまっては意味がないわけで、そうした能力、そして古い世代に怖気つかずに意見を言うことや行動力があるという人材という中で多様性を持つことが重要だと思うのです。その点では、以前から時々述べているように、「能力の高い女性」や「外国育ち」をチームに入れる価値はこういうところでもあるわけです。

 

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