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経営改善のための”多数派工作”

組織をどんな完成像に変えるか?のプランを考えるのは、むしろ簡単なことです。そして、わたしなんかはこれが楽しくもあります。

しかし、それを「どうやって変えるか」は、多くの場合、ドロドロとした政治的闘争の世界を含み、日本人の多くはやりたがりません。多くの外部コンサルタントもそこには「助言」しかしないわけです。本当に大変なのは、考えることではなく、遂行することです。時間もかかるし、気苦労も多い。そして、多くの組織では、改善の障害になるのは、長くその組織に貢献してきた古い人であり、その人たちが取締役や部長を占めて「鉄の守旧の壁」を構築しています。後ろを振り返れば、今度はただついていくだけのキョンシーのようにフォロワー化し無思考化した中堅社員と、こんな組織辞めてやる!と仲間内でいつも言い合っている若手社員。

古い組織で50人も人がいると、もうそうなっているのではありませんか?(それに気づいていないのはもっと重症ですが)

 

特に長く続く組織の場合、その上層部は0から事業を立ち上げた先代たちの野武士の時代も知らず、需要が堅調に拡大している中で品質と納期をきちんと守り、他社よりも安い見積もりを提示すれば何とかなった「保守・維持の時代」に営業、生産それぞれの部門の役割を堅実に果たしてきた「実務のプロ」である(でしかない)ケースが日本では(実は外国でもそれは同じ)多くあります。

それはそれで高度な実務スキルであり、会社の貴重なストックであるのは間違いありません。間違えてはいけないのは、「経営のプロ」だけ揃えても会社は成り立たないのであり、「お客さんに喜んでもらえる商品、サービス」が会社にあることは会社が成り立つ大前提です。しかし、その「実務のプロ」だけでは会社を時代に合わせて変えていき発展させていくには不十分な時代になってしまっているのです。わかりやすい例で言えば、実務のプロだけでは、「若い人が来てくれない、辞めていく」「請負業務でみんな精いっぱいで、いつまでたっても安定した収益の柱がない」という状況のまま、労務費や仕入原価が少しずつ上昇し、顧客の需要の伸びがあるとき急に停滞する、ということが現実に起きている時代になっている。しかも、その人たちは、プロジェクトや組織をマネジメントするとか、関係セクターを巻き込むための論理だった説得をするとか、あるいは資金の効率的運用や資金投下の緩急をつけることとかの訓練を相当の年齢になっても受けたことがない。

最近も上場企業にもう25年も務められたというサラリーマンの方とお会いしたのですが、新聞の経済記事を見ても、表面的な事象に皮相的なことを言うだけであり、業界の構造変化やその会社の歴史的経緯を元に構造的な軋みを明らかにするようなことはこういう人たちにはできないわけですが、それでも年齢が立ちさえすれば立派に課長級をお勤めでした。

 

だからとして、経営者であるあなたが、あるいは若手のエースであるあなたが、「もっと明確なビジョンを元にそれぞれがいつまでに何をやるかの戦略を明確にしましょう」と突然言いだしたとき、会社の大幹部からかえってくる反応は、「ビジョン?若旦那はまた、訳も分からず眼鏡屋でもやるのか?」的なレベルでしょう。あるいは、「もっとマーケティングの視点を取り入れて、ターゲットセグメントを明確にして、そこのパーセプションをコントロールしていきましょう」とか言い出すと「こぎれいな広告でも出すのか?」という反応が関の山です。

 

どうすれば、組織は変えられるのか?それは、突貫小僧がそのまま白髪になったような私にとっても20年以上取り組むとても重いテーマです。

 

経験則でいれば、中小企業では、そうした経営幹部の1/3以上はそうした思いを共有できる「同志」であること、また、社員の2割以上はそうした「経営改善の言葉が通じる」人であってくれれば、トップの強い意思があれば組織は動かし始めることができるように思います。ただし、その同志は一部門だけに局在しているのではなく、今後維持発展の必要な部門に分散して存在している必要があります。

私自身が20代の頃から会社を変えよう、と思った時に一番困ったのは、「経営目標が必要」「行動計画に根付いた予算と実績対比とPDCAサイクルが必要」「対象マーケットの絞り込みをすればアプローチ精度は上げられる」というような経営を考える基本概念を回りの人に話しても、言葉が全然通じないことでした。これでは「敵か味方か」以前に、「外国人のお客様に愛想笑いする店員」状態になってしまいます。まだ、理解して猛然と反論される方が自分も案を改善できるし、話し合いのしようがあるというものです。

 

ここから先の話は20年近く同じ話をあちこちでしているので、昔から私を知っている人は、「あいつ、まだそのネタやっているのか?」と思われるでしょう。

 

あなたが幼い頃、近所の子供とサッカー(これは時代に合わせて言葉を変えたので昔はこの例えは野球でした。)をするとき、ただ、ゴムのボールを抱えて「〇〇ちゃん、さっかーしよ~」と言って、道路っ端でルールも知らずに蹴っていたはずです。しかし、今テレビで見る「ジャパン」の試合はそうではなく、ルールと、用語と戦略、戦術にあふれています。(松木某さんの様にあまり溢れていない人もいますが。)あなたがもし、プロのサッカー選手ならば、一生懸命これらを学び、過去の良い事例としてレベルの高い試合を映像で見てメモを取り、電車の中でも「どうしたらあれを自分たちは再現できるんだろう」と悩み、そしてそれらのイメージをもって練習の中で自分で再現できるよう何度も反復して取り組むはずです。それは観客やスポンサーからお金をもらってサッカーをするのに必要だからです。

そして今、あなたはサービスや商品を提供し、あるいは集客を行い、彼らから対価をもらうプロのビジネスマンのはずです。ビジネスにも同じようにルールと用語と戦略がたくさんあります。あなたがプロのビジネスマンならば、一生懸命これらを学び、他社事例を検討し、練習を行い、実戦に臨むのは同じように当然のことだと私は思うのです。あなたはそれらを知らない「自分勝手な子供のサッカー遊び」をしていませんか?

 

私は皆にそう話し、あちこちで終業後に「勉強会」と称して基礎的知識を皆で共有し、各単元の最後に「自分たちの会社ではどうなんだろう?」と皆に呼び掛けてすこしずつ同志を増やす活動をしてきました。そのネタの仕入れのために私自身、自腹で何百万円もかけてスクールに通ったり、有給休暇を取って研修を受けたりもしました。

地道ではありますが、この方法は各部での会議で中心的な役割の人を巻き込む(そういう若い人はたいてい同じような問題意識を実は持っている)と、視点が「実務をこなす」から「経営的に目標達成に効果のある方法を探す」に確実に変わっていきます。勉強会では時間も限られやれることも基本的なことに限られています。しかし、やるのとやらないのとでは大違いです。一度、概念を知ると、たとえば、「市場の中で独自のポジションをとっている、ということを顧客に分かってもらえる打ち出し方をしないとね」というような概念を共有すると、お客様への話す内容、提案資料などにも皆、「このサービスは他社とはこんな点が違っていて、それはこんな効果があなたにとってあるんです」という話をしなきゃいけないんだな、というように変わっていってくれます。

ただし、そこからは自律的に改善していってくれるか、というとそれも考えが甘い。少し言葉と概念を覚えたぐらいでは、実際には運用するほどの応用力はないので、すぐにまた元に戻ったり、不十分な検討にとどまったりということが起きてしまいますので、そこから先はMBAスクールでは「ケース」にじっくり取り組む、というようなことをするわけですが会社ではそうもいきませんので実際、目の前に起きている「ケース」でその概念の運用のトレーニングを行いながら実施していくしかありません。そこはもう執念深く人の部署まで自分で考え社内で語り続けるしか、今のところはいい方法はありません。自分と同じように人が勉強し考えてくれるかというとそんなことはなかなか期待できないのが現実です。

 

そういうわけで経営者や経営層で変えていく覚悟が出来たら、次にやることは戦略の立案とともに、その考えていることを皆で共有し討論できる「経営に関する共通言語を持つこと」なのではないか、と思っています。ところが、小さな会社でそのような船頭役がいないケースもあり、最近あるお付き合い先でまた、これを始めてみることにしました。

こんな感じで10回ぐらいにテーマを絞ってやろうとおもっています。

第1話 ビジョンと戦略の一貫性(縦の一貫性)
第2話 戦略群の概要と戦略間の一貫性(横の一貫性)
第3話 マーケティングとは何か?(Perception is Reality)
第4話 マーケティングの4Pをどう考えるか?(ここでも「一貫」)

・・・

過去にもいろいろなところで勉強会をしてきたネタなので(上のサッカーネタも)「あいつ、またあれやってるよ」とあちこちから言われそうなタイトルなのですが、過去のレジュメを勤務先から持ち出しているわけでもないし、持ち出していてもその会社にあわせて再作成はしなければならないので今必死に作成に追われています。

というわけでしばらく(他のレポートも重なっておりまして)執筆作業に忙しく、当面ブログの更新は週3回程度にさせていただこうと思っております。

 

 

最後に、もしあなたが、若いリーダーであり、周辺の部長・課長クラスにはこうしたことをやって、賛同者を集めてはみたが、やっぱりトップは今までの成功体験に基づくやり方を変える気がなく、その体制が3年以上続く見通しならば、あなた自身が勤務先を変えることをお薦めします。あなたがどんなに頑張ってもトップが考えを変わらなければ会社は変わりません。トップの器以上に会社は大きくなりません。3年を無駄にすることはなく、他社でその努力と能力を発揮することを検討するべきです。そのような人材を求める中小企業はたくさんあります。というか私が欲しいです。

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