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「価値ある事業」と「事業価値」ver.2019 お金の流れは変わるのか

明けましておめでとうございます。今年もぼちぼちと皆さまのお役に立てばいいな、あるいは気づきになればいいな、という情報を更新してまいります。

新年1回目は、「事業の価値」とは何なのか?です。

 

初めに言いますと、私自身、20代の頃からずっと「赤字」「資金残」「買収した親会社ののれんの減損判定」「自社社屋不動産や在庫の減損兆候」「自分の代表の会社が売り飛ばされる」を億の単位のお金で気にしながら仕事をする場面が20年以上続いていました。そんな中では「事業価値」とは、ファイナンスの教科書に載っている「ネットプレゼントバリュー」の計算式以上のものではありませんでした。ただ、資金を繋ぎ、組織を生き延びさせることに必死な日々(しかもそれは部下たちにはあまり見えていない孤独な苦しみ)。あるいは、芳しくない実績に毎週毎週切腹を覚悟して収支を親会社に報告して、何とか切り抜けると汗びっしょりという日々が私の20代後半からの半生でした。

対応品質や価格競争力はもちろん気にしていましたし、その時々に行っていた事業が世の中により大きなプラスのインパクトを与えられるように組織と人を導く、ということは頭の片隅にはいつもあったのですが、そこに向かってひたむきに走る、ということはなかなかできませんでした。社内に他にそういうことを考えて行動してくれるメンバーもいませんでしたし、利害関係者を動かして資本政策とそれを元手に大幅採用を実現するということもできなかったのは、自分ひとりにそこまでの力がなかった、というのが正直なところだと思っています。日々の実務をこなす自分のほかに、もう一人こうした構想を実現にドライブすることに専従できるような自分がいればいいのに、というようなことを一時期よく思っていました。

 

中小企業の経営者の皆さんとお話ししていると、「今の事業の先にあるもっと突き抜けた価値に集中していきたい」という美しい構想を描いておられる方がとても多いことに気づかされます。皆さん、その事業分野には情熱を傾けておられるし、業界や市場にもお詳しいのでかなり具体的です。もしそれが実現していれば、もっと競争に左右されずに比較的高い単価で、しかも社会的にプラスのインパクトを与えられるはずなのに、やはりかつての私と同じように、時間と資本と人材とを同時に揃えて、リスタートするというほどの準備が現実にはなかなかできない。中小企業の経営者は、戦略構想や判断だけでなく、かなりの実務的役割を担っていて日々の数字を作る中心人物でもあるのが通常なのですから。

 

それを、「本来の仕事ではない」とか「経営理念とビジョンを明確化しそこへ至る道筋へ組織を率いるのが経営者の役割」とか本に書いてあることをそのままいうような人がいますが、年初から乱暴なことをいうようですが、そういう人に私は思う。

「お前がやってみろ」(きっとできない)

 

経営とは、私も含めて自分も周囲もそれほど頭もよくないし全然合理的でもない人間がやるものである。しかも中小企業はお金もないし、いい人も来ない。その弱さを理解し、寄り添い、代わりに荷物を背負ってあげ、肩を貸してあげる存在でありたいと年初にあたり、気持ちを新たにしています。経営者がいつも考えているけどやりきれない理想への道も、すこしでも私たちが分担してあげることで進みやすくしてあげたいと思っています。

 

 

私がこの事業を始めるときに、助言もしてくれ、そしてわざわざファーストクライアントを紹介してくれた、超大金持ちの友人が、その紹介の時に私に言ったことがあります。

「今、お金の流れが変わってきているんだよ。」

 

彼自身、海外在住から一昨年帰国し日本でその私財のほんの一部を文化的事業に投下しているのですが、彼の言葉をかみ砕いて言うと、「我々の世代は(私がそうであったように)、お金が目的で世の中が手段であった。しかし、今若い世代は、「世の中を生きやすくするために」「お金を使いたい」と本気で考えている。」冒頭に書いたように、常に破滅という名の目に見えぬ怪物に背中を追いかけられて生きていた私は、彼の言っていることをその時には「余裕のある金持ちのきれいごと」だと感じ理解できませんでした。

しかし、そのあとに出会った若い経営者たちは、実際に「災害時にすごく助かるし、今までよりも全然安い」「お年寄りが助かるし有資格者にとっても収入が安定する」「中小企業でも大企業と同じように海外チャレンジできる」などの「希望」を堂々と口にしていました。また、彼のおかげで弊社のファーストクライアントになってくれた企業は、いわゆる「ソーシャルベンチャー」として、「社会の無関心を打破する」ことに挑戦するという事業理念を持っていました。正直、「ソーシャルベンチャー」なるものが事業として成り立つとは、稼ぎの難しさを痛感していた私はそれまでまったく思っていませんでした。それも実際の扶助事業ではなく、彼らの目指す「知らしめる」ことに日本人はお金を払わないだろうと思っていました。それでも彼らは、多くの協力者を得、大企業と対等に商談で渡り合い、事業を継続し少しずつでも拡大できています。

 

そして彼らは皆、口を揃えて言うのです。「もっと世の中にこのことを広めていきたい。そのために会社を大きくしていく力が欲しい」

 

私は、こうした光景をみて、自分の20年余りはいったい何だったんだろう、何でこんなにも怪物に追われて年を取らなければならなかったんだろう、と悲しく思いました。過ぎた時間は帰ってきませんので、今日から新しく生き直すしかありません。もしかしたら、友人のいうように、「お金の流れは変わってきている」のかもしれません。私のように心に垢がたまった人にはそれが見えていないだけだったのかもしれません。そして、皆さんに私も問いたい。

 

「価値ある事業とは、ネットプレゼントバリューが高い事業ですか?」

 

そして、私自身と皆さんに突きつけたい。

「あなたはそのように生きたいのですか?」

 

社員を使い倒し、FCや下請けを疲弊させ、政治力で新規参入と競争を阻害し、顧客の利益を無視した手数料収入を上げ、そうして得たNPVをベースに個人はストックオプションを得、企業は時価総額を拡大しM&Aを進めていったバブル崩壊後の30年弱~私の仕事そのもの~は、仕事の「価値」を曲解していたのではないか。たしかに生活費に困るような時期もあったのだが、本当に幸せだと思いながら仕事をしていたか?と言えばいつも自分を不満に思っていた。それはお金にではなく、自分の姿にである。

 

 

本当に価値があること~いままで不便だったことが便利になり、困っていた人が助かる仕事~が世の中に広まっていくことを少しでも手伝っていきたい。それがきぼうパートナーの今年の「方針」です。

本年もよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

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