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「ピアボーナス」ってどんなボーナス?

今日は祝日ですので、シリアスな話はなしに、最近の話題から一つご紹介します。

 

お付き合い先で、最近話題の「ピアボーナス」についてディスカッションしました。今年に入ってからぐらいでしょうか?ずいぶんとメディアでも取り上げられ話題になっています。

このブログに記載する話題、あるいはお付き合い先でお話しすることは、前提として私が作る側や適用される側として当事者であったもので、そのいい点や問題点を自分で考え体験し工夫し、かなりは失敗したことです。このブログのタイトルは、私が見てきたことという意味で「経営の光景」としたのは、そういう自分の体験、視点を若い方の他山の石とするという意味があります。

本や講演会で読んで知っている、というレベルでは実際にやってみろ、と言われた時に対処できないものも多いので、そういうことは「やったことがありません。」と注釈付きで話します。この「ピアボーナス」もそうしたトピックスで私が実際にはやったことのないもので、適用したときに実際にはどんな課題が起きるかは想像でしかありません。

 

4年ほど前、シンクスマイルという会社から、「〇〇をしてくれてありがとう」とバッチを送りあう、という仕組みを紹介されました。その時のお話しでは、離職率の高いパチンコ店のアルバイトに適用したところ、職場の協力しあう雰囲気が生まれ離職率も改善した、ということでした。その時には適用できるような依頼先はなかったのですが、「「成果主義」の足りない点を補う方法として現実的であるし、最終的にお金に少しでも変えていければ面白いですよね」というお話を代表としていました。今でもこの仕組みは販売されているようです。

ピアボーナスは、そのお金化構想をどこかの誰かが実現してくれたもので、最近お付き合い先でお話しする際に調べて知ったのですが、アメリカではシステム開発系を中心に導入事例があり、最近ではあのGoogleが採用したんだとか、ということで日本でも盛んに対応クラウドシステムが営業されています。簡単に説明しますと、職場で他人に「ありがとう」を贈りあい、そのありがとうの数を集計して、少額でも毎月お金に換算して社員に支払おうというものです。

成果主義的な評価体制をとると、そこに「同僚への献身」であるとか、「会社の価値観を体現する行動」を評価する尺度を盛り込めず、そうしたものが軽視され、やがては自営業の集まりのような組織になってしまう、空気の悪い組織になってしまうのではないか?ということを懸念される経営者はとても多いですし、実際経営者が「文化」を重視して経営しないとそのような傾向が見えてきてしまうことはあります。従来の評価制度では、これを補うために行動を上司が評価する、あるいは同僚や部下も評価するというような方法を併用することが多くありましたが、期末に手間がやたらとかかる割には、恣意的に操作されているとの疑念がぬぐえなかったり、実際先週の目標管理制度のところでも記載したとおり、上下への激変緩和に使われている状況になったりします。

今、ピアボーナスが注目されているのは、こうした行動評価を行う上で効果的であるだろう、ということのほか、毎日他人とのかかわりの中で自分がどうするべきか、あるいは他人の行動や気持ちに関心を払い感謝するということができる仕組みだろう、ということが理由です。組織での居心地、モチベーションを決めるものは自分の売上成績ではありません。その組織で自分が居場所があり、皆にそこにいてほしい、と思われているということです。ところが、普通の組織ではこれを確認できるのは、「辞めます」と告白したときに同僚、周囲の表情の変化からでしかありません。それを毎日、ありがとう、といいあうことで補える、ということです。

ただ、本当にこれを導入すれば、ハッピーなのか?ということは少しお客様とも議論をしました。

例えば、「掃除してくれてありがとう」は金銭の支払い対象にするべきでしょうか?未だに女子社員にお茶くみ、掃除をやらせている会社の、女性の能力の発揮の障害を助長するだけかもしれませんし、そうでなくても、その会社の存続発展に寄与する、プラス支払の対象となる行動だったでしょうか?つまり、ピアボーナスの支払いの対象となるべきことは、その会社において、「このような行動が称賛されるべき」という尺度があるべきことであり、それはその会社の人材理念に基づくものであるべきなのです。そのような理念に沿った行動を皆が心掛けるようにするにはとても良い方法ですが、そもそも、「立派な社会人」以上に、その会社らしい価値観を表す人材理念のある会社ってそんなに多くないようにも思います。(その会社は数週間前にその人材理念を整理したばかりでした。)

 

結局、呼び名が変わり、便利なクラウドシステムが介在してくれたとしても、人が人を裁く、という評価報酬制度の本質は変わりません。裁くという言い方が不適切ならば、人、あるいはその人の行為をその会社の考えるGoodとBadに仕分け、Goodを推奨し、Badを戒める、というのが人事評価の本質です。それを経営者、上司がやるのがクラッシックな人事評価で、お互いにやるぐらい人材のマインドが成熟している、と経営者が信じられるならばこのような方法があるわけですが、そうと分かると、経営者の気苦労を社員に移管するということでもあり、気苦労が多く面倒だということはかわらないということです。たぶん最初の1か月、2か月は新鮮でみな真面目に取り組むと思うんですが、ずっと真剣にその会社の価値観を追求してお互いをたたえあう、というのはとても大変なことです。

 

こんな意見もありました。「日報やタイムカードすら漏れているのに、こんなこと、ちゃんとやってくれるんか?うちの社員」一同沈黙。

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