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100年企業と農耕民族

間もなく実りの季節の田んぼをみて感じました。100年を超える歴史を持つ会社といくつかお付き合いがあります。いずれもそれほど大きい会社ではないのですが、特徴的な商品を根強い固定客に販売しているメーカーです。また、同族の非上場企業で、中には当主を承継すると名前も襲名する、という会社もあります。戸籍も変えるらしく、本名は別にある相撲の行司や歌舞伎俳優よりも本格的です。

そうした会社の若旦那とお話すると、言い方は悪いですがおっとりとした品の良さが共通しているように感じます。また、経営についてお話しても、社稷を守ることが最優先であり、そのために資本を拡大したり、あるいは拡大路線のためにリスクをとってレバレッジを聞かせるような策をとったり、ということはまず採用しません。もちろん、外部資本を入れることなどもってのほか。イケイケのベンチャーとは対極的で、経営に関しては非常に慎重に考えておられることが共通しています。そして、社員を家族同様に大事にされていて、先代から仕える番頭さんがいらっしゃり社長を盛り立てていることも共通しています。この社長が表にでていても、しっかりと城を守る番頭さんの存在というのはベンチャーにとっては本当にうらやましいことです。

 

そんな会社にご提案することは、やはり彼らの経営の考え方に基づき漸進的な計画を、本体を財務的にもブランド的にも傷めない範囲で、かつ時代に合わせて変化することを内外に示せるようなことを考える、ということが中心になります。実は、思いっきりジャンプしたがる若い企業よりも、こういう会社に登頂ルートを示す方が遥かに難しいものです。すでに構築された城郭の土台を一部入れ替えるようなことをすると全体が崩れてしまうことを社長も社員も恐れているため、それらには手を付けず、引き続き頑張っていただきながら、その外部で小さな成功を作り、それを徐々に拡大することという方法を中心に考えています。

そういう会社の多くはまた、人事評価や商品設計で知見が古く、今の若い働き手からすると「遅れている」と映るようですが、社長や番頭さんは、それに気づいていない、あるいは気づいていてもどう動けばいいかわからないようです。そういう場合、他社の人事制度のうち、その会社にフィット度が高そうな事例や、最近の潮流をまとめた「講義資料」のようなものを作成し、お話の機会をいただいて、社内の知識をアップデートするところからまずは始めています。

こうした会社とお話するようになってから意識するようになったのですが、実はこれは新しい若い会社でも同じで、皆自分の事業分野の技術やマーケットにはとても詳しいし情熱的なのですが、財務や労務管理制度に関しては、最近の潮流であるとか、あるいは基礎的な知識も不足したままになっているケースも多く、またその分野の専門家を雇ったり、コンサルタントをそれぞれ入れるようなことも経費面からできないでいて、だんだんと矛盾やいびつさが拡大していっている、という事例も多くなっているようです。そのため、まずは勉強会的なことから、ということを最近では多く取り入れています。それも、中小企業への対応ならば、1社でほぼすべての領域で対応できる弊社の特徴です。

 

「経営を支援する」というと、急成長路線のための人と金の調達を行うと思われがちですが、100年企業が次の100年も社会で敬意をもって存続していける土台整備はそれとは違っています。一つは今までのやり方を社会の変化に合わせて少しずつ調整することですし、その一方で守ってきたものを価値あるものとして社会に提供し、共存していくことである、ということを彼ら若旦那自身が親から教わった精神文化として持っているのでそれを彼らが知らない人脈や知識とミックスして新しく形にしてあげるお手伝いをすることだったりします。

最近、日本の文化を大事にされる方に、「弥栄(いやさか)」という言葉を教わりました。農耕を中心とする産業文化では自分の田んぼだけをよくすることはできず、皆お互いに影響しあうため、皆でよくなることがベストの解だったのでしょう。その精神文化が100年企業の若旦那には受け継がれているように感じています。

 

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